優しい季節の昼下がり、風通しのよい草原。
こんないい天気の時は、絶対アイツはそこにいる。あやつる力そのままに日向ぼっこの好きなヤツだから。
両方の奴らが四六時中つけまわすお陰で他の時にはなかなか会えやしないのだ。アイツは・・・ラビは神経質だから いつも隠れたり逃げ回ったりしている。おかげで俺までとばっちり喰らって会えないのだ。ホントにカンベンしてほしい。

だから久しぶりに姿を見て、明らかに俺を待っているような耳の動きを見て、それだけで有頂天になって。

思わずその勢いで突っ込んでしまっていた。




芹沢たかみ様からの贈り物v進化の狭間で:SIDE-B




「・・・フレイッ!今のはどういう了見だっ・・・?!」
「うわー・・・ラビ、怒ってる〜・・・毛、逆立ってるぞ・・・?」
あ・た・り・ま・え・だっ!寝てる相手にいきなりフライングボディーアタックなんぞ仕掛けるなっ!一瞬息が止まったぞ!」


・・・いや攻撃したワケじゃないんだけど・・・。
ハッキリ言って何も考えてなかっただけで。それはラビも解ってるだろう。もし本当にフライングボディーアタックのつもりだったら 即座にリヒト・ナーゲルが飛んでくる筈だ。ラビの爪は死ぬほど痛いので出来れば喰らいたくはない・・・。
とはいえ確かにあの「フライングボディーアタック」はあまりに完璧に決まっていて、俺もラビの反応が怖くて固まったくらいだ。 ちょっとばかりバツが悪い。てなわけで思わずごにょごにょと言い訳モード。うう。


「だあ〜ってラビ起きてると思ってたしさ〜。てか起きてたろ?」
「・・・それとこれとは話は別だっ・・・」


あ、可愛い。
ラビは見た目ツンツンしてて思い切り釣り目(つーか猫目)で本人も神経質という三拍子揃ったトゲトゲオーラの持ち主だけど、 その分表情が動くと驚くほど可愛くなるのだ。いや別に、ツンツンしてるときから十分可愛いんだけど。きょとっと 凝視する時なんか俺的に最高vしかしこの「思わずバラしてます」って状況もちょっとそそるものがある。
・・・なんて思考をほんのちょっとでも悟られたら、マジで命がない。急いでフライングボディーアタックに至る状況に 納得してもらわねば!


「まーいーじゃん・・・とりあえずまーた両方がうるさくてさ。もういつ進化するんだもう進化しそうなのかってうるせーうるせー」
「・・・またか。」
「俺たちどっちでもないからなー。加えて俺たち強いじゃん?早くどっちかになって欲しいんだろうけどさ」


一応嘘ではない。
ただそういったことから逃げてるのはいつものことで、今日俺が走っていたのは「逃げる」以上にココに「来る」ためだったりする。
まーそれは言わなければバレないことだから別にいいとして。


「・・・おい、フレイ」
「何。」
「・・・何人の身体の上でごろごろしてるんだ・・・いい加減どけ。」
「やだ。ラビ気持ちいーもんv」
「・・・」


だってこの為に来たようなものだからなー。

今の所、外見では俺の方が人に近くラビの方が獣に近い。そのため順当に行けば俺が人型になりラビが獣型になるだろうというのがもっばらの予想だ。

でも、そんな予想をするヤツは本当のことをわかってない。
何故なら俺は外見とうらはらに獣の衝動を知っている。獣の気持ちを持たずにこうやってラビにくっついていた時代は、もう遥か昔だ。
言葉に変換できない身体の奥にある熱のような感情。俺の場合はラビにだけ反応する。あまり優しいシロモノじゃない、 狂ったような衝動だ。あえて言葉にするなら・・・「喰らいたい」という感情。 それはラビも知らない。ラビにはそういう『熱』の『匂い』を感じないから、おそらく気づきようがないのだ。俺のこの体内の 炎には。

だからこうしてくっついているとその感情を爆発させてみたい衝動にも駆られるが、それ以上に今は抑えるしかないという危機感の方が 強く働く。今この感情に気づかれたら確実にラビは俺から離れていってしまう。ラビから見れば得体の知れないモノの一方的な標的になっているという事実には嫌悪しか感じない筈だ。この熱を知らなかった頃の俺の記憶がそう確信させる。ラビが同じようにこの熱を持つようになるまでは悟られるわけにはいかない。

だから俺には何故人型と獣型の仲が悪いかは、何となくわかるような気がしている。
獣型はこの熱を隠さない。この熱のまま行動することをある意味美徳としている。反して人型はこの熱を表向き嫌悪する。 この熱を制御することを美徳としている。言い換えれば質量の違いはあっても人型だってこの熱を持っているということで、 多分だからこそ獣の生き方が気に入らないんだと思う。それは人型に対する獣型だって同じこと。

そう思うと幼稚な戦いではある。今の世の中って。

ラビも「人と獣が何故戦うのか結局全くわからない」とこぼして、俺もそれには頷いたけど、多分ラビと俺のその結論に至る道は 全然違ってるはずだ。ラビは本当にまだ何も知らない。俺は何故というのは解るにしても戦うほどの理由ではないことを知っている。そんな全く違う筋道で同じ結論にたどり着くんだから、つくづく人と獣って面白いよなーとは思うのだった。

・・・最近特に獣の方の奴らが俺に進化の気配の有無をしつこく聞いてくるのは、多分俺が「進化できそう」なのが何となく解るからなんだろうな、とはおぼろげにわかっている。実際気を抜くと今とは違うものになりそうな予感はある。ただ進化する理由は厳密にいえばただ一人のためで、しかも進化なんかしたら最後なのもわかるからとてもそんなものする気になれない。ある意味この状況は不埒な熱を抱えながら表向きただ甘えてじゃれてる風に装って自分もそう思い込もうとしている、今のこの姿に似てる気がする。


周りなんか知らない。意味のない戦いなんか興味ない。俺にとってはラビが離れないことが一番大事だ。


「ラビ・・・今はこのままでいいよな」


そう言うとラビは吃驚したように大きな目をさらに大きくしてじっとこっちを見る。
・・・ワリと同じようなコトを考えてたんだな。ラビってホントに解りやすい。


「俺、ラビと違うモノになるのは絶対嫌だ。でもラビと同じモノに進化して一緒に戦ったら楽勝で勝っちまう。それも何か嫌なんだ。」


人と獣、どちらかを倒してしまったら、俺もラビも後悔しかしないと思う。俺たちは、いや人型も獣型も皆同じだということを 少なくとも俺とラビは知っている。俺はラビが離れなければそれでいいからいいとしても、ラビは絶対に苦しむ。
それだけが嫌だった。


「・・・フレイは、強くなりたいとは思わないか?」
「今は、これでも十分だからな・・・今はいいんだ。今の過保護状態なら完全体や究極体の長老と戦うなんて絶対ない。成熟期程度の奴らなら 十分身を守れる・・・。だから、今はいい・・・」
「何だか言い聞かせてるみたいだな」
「・・・」


・・・その無防備に「逆鱗」に触れるの、少しは慎めよ。誰のせいだと思ってるんだ・・・。
半瞬後俺はニカッと笑って再びラビの身体を敷布代わりに寝転がり始めた。ささやかな仕返しというヤツである。


「フレイ、その、わき腹とかをなぞるのはやめろ。変態だぞ」
「はいはい」
「ってオイ!」


おっしゃ!成功!


「挨拶だよ挨拶♪」
「だからって口を舐めるなっっていつも言ってるだろうがー!」
「いいじゃんか減るもんじゃないんだから」
「そういう問題じゃない!」
「俺にはそーゆー問題だもーん」


わざとらしい溜息をつかれるが、ラビは基本的に隠し事ができない。本当に嫌がってるわけじゃないのは一目瞭然だ。
あんまりしつこくやると気づかれて本気で嫌われるんだろうが。
ラビは「まだ」変わってない。ずっと変わらないのかもしれない。それが嬉しいのか辛いのか、厳密にはよくわからない。


「・・・『ラビ』が『減る』んじゃなきゃ、いい・・・」


それが素直な俺の気持ち。
多分ラビは、変な寝言だと思ったろうな。


初めて姿を見たときから奇妙に俺を引き付けた、この存在を損ないたくない。
どうせ進化するのなら、この存在を得るためにしたい。
今がそのときではないのがわかるから、今はただ触れるだけ。

だからせめて今はこの感触を楽しんでいよう。


フレイモンサイドでした。ホントは三人称で描こうと思った話を、あえて一人称で敢行したのはこの裏表を描きたかったから♪ ケダモノっていいよね・・・vストラビモン視点はコチラ。

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