優しい季節の昼下がり、風通しのよい草原。
その草の上でまどろむのが好きだった。
若葉の匂いとほどよい温かさでふわふわ浮いた感じになる。そんなとき、一瞬何もかもを忘れて楽になれた。
・・・大抵は、中断の憂き目にあうのだが。

もっとも、中断の気配は大分前からわかる。
獣型ほどではないにしろ、半人半獣という珍しい種の俺はかなり離れた位置からでも生き物の気配を感じ取れる。
耳をぴくと動かせば・・・いや本当はそんなことをしなくてもわかるのだが・・・いつもの気配がいつものスピードで 走ってくるのが嫌でもわかる。
目を開けて起き上がろうかとも思ったが、思いなおしてそのまま狸寝入りを決め込むことにした。わざわざ起きてやるのも 癪だったからだ。とはいえ待つ身としては、こちらの方が寧ろ落ち着かないかもしれない・・・。


「ラビーッッッv」
その体勢で待つこと数分。やっと来た、と思った瞬間。

「ぐぎゃっ!」

とゆー、情けない自分の声を聞いたような気がした・・・。




進化の狭間で:SIDE-A芹沢たかみ様からの贈り物v




「・・・フレイッ!今のはどういう了見だっ・・・?!」
「うわー・・・ラビ、怒ってる〜・・・毛、逆立ってるぞ・・・?」
あ・た・り・ま・え・だっ!寝てる相手にいきなりフライングボディーアタックなんぞ仕掛けるなっ!一瞬息が止まったぞ!」


・・・コイツの名前はフレイモン。俺と同じ成長期の半人半獣のデジモンだ。そして俺と同じで特殊な能力・・・純度の高いエレメントを 操る能力を持っている。俺は光のエレメント、コイツは炎のエレメントだ。「エレメントを操る」ことはかなり世界に影響の高い能力だということで図らずも注目を浴びるようになってしまっている。もっとも実は半人半獣というだけで人型と獣型のデジモンが争っている この世の中では特異な存在だったりするのだが。


「だあ〜ってラビ起きてると思ってたしさ〜。てか起きてたろ?」
「・・・それとこれとは話は別だっ・・・」


ちなみに俺の名前はストラビモンというのだが、コイツが勝手に『ラビ』と略称で呼んでしまった。仕返しにこちらも『フレイ』と 略称で呼んでいるのだが、何故か逆に喜ばせる結果になっている。理不尽だ。


「まーいーじゃん・・・とりあえずまーた両方がうるさくてさ。もういつ進化するんだもう進化しそうなのかってうるせーうるせー」
「・・・またか。」
「俺たちどっちでもないからなー。加えて俺たち強いじゃん?早くどっちかになって欲しいんだろうけどさ」


そう、獣と人の集落の狭間で「希少種」の俺たちは保護されている。そしてどちらに進化するかを待たれている。 言い換えれば四六時中監視されているワケで正直あまりよくない状況だった。どうにかこうにか話をつけて、 最近台頭してきた天使型のデジモンの力も借りて、避難場所にと結界を張っているのがこの草原。ハッキリ言って狭い上に 見晴らしがよすぎるため「生活」はできないが、憩いの場としては上出来だった。この空間がなかったらフレイはともかく 俺がもたない。
ま、それはともかくとして・・・。


「・・・おい、フレイ」
「何。」
「・・・何人の身体の上でごろごろしてるんだ・・・いい加減どけ。」
「やだ。ラビ気持ちいーもんv」
「・・・」


・・・まあ・・・嫌ではないのだが・・・。

今の所、外見では俺の方が獣に近くフレイの方が人に近い。そのため順当に行けば俺が獣型になりフレイが人型になるだろうというのがもっばらの予想だ。
だが、最近のこの世界は変化が著しい。昔は人型が獣型になるとかその逆になるということは滅多になかったらしいが、今ではかなりの確率で発生するようになっている。進化した途端に形態が代わって陣営も交代、というのはそんなに珍しいことでもなくなっている。 そういう状況で獣人の立場から見ると、この獣型と人型の争いは意味がないとしか言いようが無い。獣人でなくてもどちらに進化するかわからないというのならつまるところ両者に差などないということになる筈なのに、何故争っているのか。そこが解らなくて両方の長老に色々聞き込んだが、どうも『意地』としか言いようがないんじゃないかというのが俺の結論だった。

目の前で無意味な争いが繰り広げられているというのは、実の所耐え難い。終わらせられるものなら終わらせたいという気持ちは勿論ある。両陣営が俺たちの進化を期待するのもその意味ではわかる。デジモンの本能として強くなりたい気持ちもある。でも・・・。


「ラビ・・・今はこのままでいいよな」


思わず目を見開いてフレイの方を見ると、頭を俺の胸に乗せてじっとこちらを見ていた。
いつもはおちゃらけているのに、俺よりも身体も小さいのに、ふと大人びた目をすることが、コイツはたまにある。


「俺、ラビと違うモノになるのは絶対嫌だ。でもラビと同じモノに進化して一緒に戦ったら楽勝で勝っちまう。それも何か嫌なんだ。」


そう、今は回りが何と言おうと進化したくない。戦う理由がないのだ。一方のために一方を叩き潰すような理由がどちらにもない。
でも敢えて反対のことを問うてみた。フレイの言葉を、もっと聴いてみたかったのだ。


「・・・フレイは、強くなりたいとは思わないか?」
「今は、これでも十分だからな・・・今はいいんだ。今の過保護状態なら完全体や究極体の長老と戦うなんて絶対ない。成熟期程度の奴らなら 十分身を守れる・・・。だから、今はいい・・・」
「何だか言い聞かせてるみたいだな」
「・・・」


・・・何か剣呑な雰囲気を感じたのは気のせいか?
半瞬後にはヤツはニカッと笑って再び俺の身体を敷布代わりに寝転がり始めた。


「フレイ、その、わき腹とかをなぞるのはやめろ。変態だぞ」
「はいはい」
「ってオイ!」


やられた!これだけは回避しようとしてたのに!


「挨拶だよ挨拶♪」
「だからって口を舐めるなっっていつも言ってるだろうがー!」
「いいじゃんか減るもんじゃないんだから」
「そういう問題じゃない!」
「俺にはそーゆー問題だもーん」


そーしてまた腹枕(うつ伏せ)に戻る。いつもの行動といえばいつもの行動。 所々いつもと違う引っかかりは感じるが、フレイモンのすることだ。いちいち目くじら立てても仕方が無い。 わざとらしく溜息をついて見せても自分の顔が笑ってるので効果もない。まあ、こんなのもいいだろうと無理やり自分を納得させる。


「『ラビ』が『減る』んじゃなきゃ、いい・・・」
「?」


いつの間にやら幸せそうに寝息を立ててやがる。そうして俺より早く寝てしまうのもいつものこと。
それにしては変な寝言だったが・・・。
まあいい。


強くなりたいという本能がある。
でもそれ以上に、コイツと一緒に笑いながら歩きたい。
この二つの条件が重なる日が来るのかどうか、それがいいことなのかどうか、今は何もわからないが・・・。

ともあれ今は、この昼寝を楽しもうと思う。









『輝ニ!』
「な!?」

見上げると皆が覗き込んでいた。

「めっずらしーなー・・・輝ニがうたた寝してしかも近づいて尚眠りこけるとは・・・!」
「しかも結構楽しそうだったわよ〜いい夢でも見てたの?」

そんな好奇心溢れた不思議そうな顔で見なくてもよさそうなものだが、多分俺が一番不思議そうな顔をしてるだろうと思う。それくらい今の状況が理解できなかった。拓也の台詞から察するに俺は寝てたのか?そのワリにはえらく生々しい感覚があったような・・・。
・・・あれ?

「・・・見てた・・・が・・・起きた途端に忘れた・・・」

即座に雑学博士こと純平が反応する。

「あ、それって重要な夢だって言うぜ?」
「起きた途端に忘れるんじゃ意味ないんじゃないの?」
「意味があるから忘れるんだよ。そーゆーものなのさっ」

・・・そうかもしれない。

「ん?何だ?」
「・・・・・・なんでもない」

何故拓也をじっと見てしまっていたのか、それは自分でもわからないが。
悪い気はしないからよしとしようと思った。










強くなって笑いながら一緒に歩きたい。
願いは、いつか叶う。これは確信めいた予感。

フレイモン視点はコチラv


昔はデジタルワールドに流入するデータ量が少なかったので単純だったけど、どんどん情報量が増えて複雑に なっていく中で人対獣の構図が変質してきたところに天使系ことルーチェモンが君臨した・・・という昔設定になってます。 心配しなくてもここらへんは絶対本編でフォローされることはないと思ったので好き放題書かせていただきました(笑)。ルーチェモンの暴走で進化する設定にしてます。ボコモンの本にしっかり描かれてるんだから 昔アグニモンやヴォルフモンがいたってことよね!ということで。フロンティア世代での新しい種は融合進化体以降 でしょう。

今更言うのも何ですが、ヴォルフモンとアグニモンの子供時代です。拓輝感覚で描いてます。最後のは余計な気もしたんですが、いつか輝ニinストラビモンも描いてみたいなーという野望を込めて 敢えて付け足しました(笑)

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