「フレイッ!?フレイ、どこだっ!?」

呼ばれた相手ことフレイモンは、この声で思わず持っていた果物を落としてしまった。
何せ呼んでる相手は想い人(というか獣というか(笑))のストラビモン。通称ラビ。
キツい外見と裏腹に天然入ったこの幼年人狼は全くもってフレイモンの感情には気がついてない。上に性質が神経質で淡白、つまりは普段はキリキリ来るのに肝心な所で鈍いという、直情炎の魔人のフレイモンには全くもって困ったヤツなのだった。んなもんでいつもいつもいつもいつもフレイモンがストラビモンを追っている。会いに行くのもフレイモンから、声をかけるのもフレイモンから。それが苦では全くないが、逆は滅多に無いのでちと寂しい。
いや違う。
皆無だ。(どきっぱり)どんなに記憶を搾り出しても、自分の名を遠くから何度も呼ばれて探されたなんて記憶は見つからない。つまり今がはじめてなのだ。「初めて」。

「ラビッvここだここ!何だ!?どーした!?v」
「・・・なんでそんなに嬉しそうなんだお前・・・何かいいことでもあったのか・・・?」
「あったあったvありすぎるくらいにあったvで?どうしたんだ!?v」
「あ、そうだ!聞いて驚くなよフレイ!俺たち以外で元素のエレメントを使うヤツがいたんだよ!」

びし。

ささやかな幸せとゆーものはささやかな言葉でいとも簡単に打ち破られるのだと、ミョーな納得をするフレイモンだった・・・。



・光と闇の邂逅・




「いつも通り俺は森の中にいたんだがな・・・いつも暗い森なんだが、そのときは特に「光」の力が乏しいカンジがしたんだ」
「ふーん」
「で、進んで行ったら突然真っ暗になってな。」
「危ないじゃないか」
「あわてて「光」の力をかき集めた。そしたら・・・」




目の前に、影があった。
正確には、身体のほとんどが漆黒の毛で覆われている獣人だった。ただ一部の毛先は金色で、そのコントラストはとても綺麗に見えた。 闇の中の漆黒の身体は本当に闇に沈み、表情も姿形もよくわからない。ただ闇の獣人は光に照らされるのを好んでないようで、何となくそれがわかったストラビモンはなるべく「光」を相手の方に近づけないように気をつけた。

「お前、光のエレメントを使うのか」

低めながらよく通る声。

「俺は「闇」を使う。俺の闇の中で光を出せるとしたら俺と同じ力を持つ者だろう・・・?」

言われるまでもなくこの闇は尋常のものではない。だが自分と同じ力を持つものがフレイモンの他に目の前にいるという事実に言われるまで全く気がつかなかったことを内心で恥じたストラビモンだったが、表面には出さず落ち着いた声で応対した。

「・・・そうらしいな。・・・お前、どこから来たんだ?ずっとこの辺りにいたのか?」
「いや、闇の中を移動してきた・・・俺は独りでないと耐えられん。お前たちのように両種族に追われて生きるのは無理だ。」
「・・・?何でそんなことを知っている?」
「言っておくがこのへんではお前たちは有名人だ。」
「・・・」

異邦人にこうキッパリ言われるとなかなか考え込むストラビモンである。
(・・・騒がしいのが傍にいるからな・・・)
ちなみに自分にも原因があるとは露とも思ってない。

それにしても、とあたりを見回してみる。目を凝らしても本当に何も見えない闇だ。光を集めなければ自分の手すら見えないだろう。だが、何故かそれほど怖くは無い。

「本当に漆黒の闇だな・・・なのにどこか安心するのは何故なんだろうな」
「それはお前がいるからだな」
「・・・は?」

意外な台詞を当然のように言われ面食らったが、闇の獣人は真顔だった。いや顔は見えないから真面目な雰囲気だった、というのが正しい。

「俺の「闇」の中で「見えた」モノはお前が初めてだ。・・・闇だけの世界はどこまでいっても闇だ。音も、光も全て飲み込む虚無の空間で俺以外のモノがそこにいる・・・異常事態といってもいい。」

要領を得ない話し方だったが、それについて追求する気にはならなかった。闇の獣人がその「異常事態」に対してどう表現していいか解らず四苦八苦しているのは何となく解ったからだ。

(・・・扱う力は正反対だが・・・似てるのかもな、俺と)

フレイモンと出会ったときの状況を思い出し、ストラビモンは苦笑した。呆れるくらいに爆走するあの炎の魔人に対する自分の感情は、実は言葉で説明しにくい。本気で呆れることもあれば少し憧れて魅かれるところもあるのだ(本人には言わないが)。一人でいることを好む自分だが、フレイモンが自分の傍から去るのは寂しいと思っている。少し変わったな、と自分でも思う。

「お前の光は・・・俺の闇を否定しないのだな。寧ろ闇が光を、光を闇が際立たせている感じだ。悪くないんだな・・・誰かと居るというのも・・・」

闇の中で影が笑んだ、気がした。見えないのに雰囲気が伝わる感覚はなかなか心地よい。ストラビモンもまた表情を緩めた。

「・・・そうだな。もう少し、光を集めてみようか。お前の闇の中で・・・」

闇の中でも、実は光は存在する。ただ量と力が不足して普通の者には感知できないだけだ。光を扱うストラビモンから言わせると「眠っている」状態に近い。ストラビモンは目を閉じてその光に語りかけ、力を与え、輝かせる力を高めた。こんなレベルまで高めるのは本当に久しぶりだ。
絶対的な闇の中で眠っていた光がぽつぽつと目覚め、ストラビモンの身体を包んでいく。その光がまたぽつぽつと離れていき、離れたそばからまた新たな光が生まれてくる。離れた光は距離をとればとるほど輝きを失うが、ストラビモンが呼びかける限り完全には消えない。その小さな輝きが無数に集まり、闇の中を照らしていく。

「・・・・・・素晴らしい」

その感嘆の声に目を開けると、ストラビモンもまた絶句した。

「・・・すごいな。」

目の前に広がっていたのは大宇宙のような空間だった。無数の光が集団を作り、集団を作りつつも個々の光を主張する。それでいて闇を壊さない。寧ろその輝きは闇の深遠を強調しているようで、何の光もなかったときより遥かに何もかもを飲み込むような感覚を受ける。・・・だが、その「飲み込み」に恐怖はない。心を奪われる、まさにそんな感じだ。
フレイモンにも見せたいな、と思い・・・闇の獣人に声をかけた。

「お前、行くあてがないなら俺たちと来ないか?「仲間」ができれば俺もフレイも嬉しいが」




「・・・で、ソイツはどうした・・・?」
「・・・フレイ・・・なんでそんな凄い形相で睨むんだ・・・何か怒るようなこと言ったか・・・?」
「・・・怒ってるというのとは少し違うし、ラビが悪いんじゃないけどねェ・・・」

内心では爆発寸前だった。何せこのストラビモンが初対面でそこまで懐くなど前例がない。想像すらできない。
しかし目の前には嬉しそうにその闇の獣人の事を語るストラビモンがいるのだ。嫉妬で気が狂うかと何度思ったか。

「大体ソイツ名前何ていうんだよ」
「あ、それは聞きそびれた。誘ったあとすぐ断って去ったからなソイツ。」
「そうか、断ったのかv」

まあその闇の獣人を連れて来なかったんだから当たり前か、と途端に満足気ににっこりするフレイモンにストラビモンは疑問の表情を向けたが、溜息をついてすぐに思考を切り替えた。大分前からストラビモンはフレイモンの不明なリアクションについては考えないようにしているのだ。

「ああ、時が来れば嫌でも終結しなければならないから今は一人がいいんだそうだ。」
「時?」
「・・・俺たちの力が必要になる時。あいつはそのときが来るのを確信してるみたいだった。そうだとすると雷や風や氷や水も、俺たちのような使い手が生まれてるんだろうな、どこかで。」
「ふうん・・・」

「だからそれまではあちらから俺に会いに来るんだそうだ。」

びきききき。

「あ、あとアイツはお前の同郷なんじゃないか?挨拶が似てたから。」
「・・・挨拶?」
「ホラお前俺が嫌だと何度言ってもやるじゃないか。口を舐めるアレ。」
「・・・」
「・・・?フレイ?・・・まああれは舐めるというより塞ぐというか吸うというかそんな感じだったが・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・?何口ぱくぱくさせてるんだ?」


その後、そのエリア一帯に木霊する位の意味不明な絶叫と問答と、それに続くリヒト・ナーゲルの破壊音および悲鳴がそこに住むデジモンたちを震え上がらせたという。

「今日は・・・今までになく派手だねえ・・・」
「そうだな・・・今日は勧誘はやめておくか・・・」

とかく目立つ『二人』であった。


その後十闘士が終結したときに炎と闇の戦士の間で悶着が続いたのだが、それはまた別の話である。


幼年期のケイオスフィールド、とゆーイメージで作ったお話。ケイオスフィールドとはカードに存在する「ダスクモンとヴォルフモンの合体攻撃」で「光と闇が一体となって脱出不可能の混沌を作り出す」というもの。退化形なので微笑ましいレベルで〜とか思ってプラネタリウム。何か違うかもしれませんが初対面の闇に懐くストラビと嫉妬のフレイモンを描きたかったのでまーその見逃していただければ。(笑)

ちなみにダスクモンの退化形はどこにも紹介されてませーん。勝手に作った設定なのでオフィシャルを探さないでください。
闇の幼年期、かなり切実に作って欲しいです・・・。

オチは何となく逆「うる星やつら」(笑)。あとストラビモンの光の力描写はロードス島戦記のディードリットのウィル・オー・ウィスプ召還が視覚モデル。

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