「願いごとが一つだけ叶うとしたら、何を願う?」

という、何の気なしの俺の問いに間髪入れずに 「俺は特にない」 と応えやがったのは案の定ロンリーウルフの源輝ニ。
すぐに純平に振ったあたりは雰囲気を読むことを多少は覚えたらしいが、

・・・どうだろうよ、と色んな意味で思ってしまったのは確かだ。


・願いごと一つだけ・



「ちょっといーかー?」

草木も眠る丑三つ時、ではないけれど他の皆が完全に寝静まるのは、実の所かなり遅い。
しかし俺はおかげさまで目が冴えていたし、輝ニは・・・というと、コイツは他人が近づくと 否応なしに目が覚めてしまうらしく、遠目では完璧に寝てたハズなのに近づいてもまだ寝てたという 試しがない。案の定。

「・・・なんだ」

30分前から起きてました、てな声が返ってきた。
ちっ。
・・・まあそれはともかく。

「お前ホンットに願い事ないわけ?」
「・・・やぶから棒に何なんだ。」
「だって普通欲しいものとかなりたいものとかいーっぱいいーっぱいあるだろう?」


返ってきたのは「何をバカなことを言ってるんだこのバカは」的表情だったがこの際それは黙認してやる!
とにかく輝ニは何を考えてるのか、全然わからないし予想もできない。ホントにこいつ子供か?と疑うくらいに ジジくさいかと思えば俺も真っ青な短絡行動を取ることもある。素っ気ないように見えてさり気に(特に女子供に) 手を貸すし、そーかと思えば突っぱねるし、ホンットわからないんだコイツは!
ただ、わかんないけど信用はできる。多分「信頼」なら誰よりもできるんじゃないだろうか。コイツ、すごく自己中に 見えるけど案外自分が一番どうでもいいんじゃないかって疑うことが、たまにあるんだよな。・・・それはそれで信頼できない 気もするけど・・・。


閑話休題。
そんな解るようで解らないヤツだから、輝ニ本人の「願いごと」は俺はとても興味があったのだった。


「例えば泉みたいに食い物が欲しいとか玩具がほしいとか」
「不要なものはいらない。」
「友樹みたいにヒーローになりたいとか。」
「俺はなりたくない」

純平の「特定の女の子とラブラブ」は引き合いに出すのは何故か躊躇われた。何でだ。


「え、じゃあ味気なく金が欲しいとかそういうの?」
ある意味イメージには合ってる気がするが、合ってない気もするぞ。
「自分で稼ぎもしないのにそんなもの無闇に欲しがるのは卑しいことだと思うが」
・・・コイツホントにガキか・・・?


「じゃあ頭がよくなりたいとかサッカーが上手くなりたいとか」
一般的なものをあげつらったつもりだったが、輝ニは心底不思議そうな顔をして、次いで真顔で聞き返してきた。
「そんなものは自分で努力するものだ。願ってどうするんだ?」


・・・少し感動した。
俺もサッカーが上手くなりたいとは思うけど、上手くなりたいと「神様にお願い」したことはなかったから。
上手くなりたくて体動かして、でも駄目だったときにどうしようもなく悔しくて、また動く。 あんまりそれが続くと諦めるけど、上手くなりたいと思う限り火は消えてくれないから、また動く。 きっと「サッカーなんかどうでもいい」と思うようになるまで俺は動いてるんだろうなーとか、何となく思ってるので このテの「お願いごと」を聞くのは、実は俺も好きじゃない。ないものねだりの冗談では言うけど。
コイツのことをいいなって思うのは、こういう時だ。いつも余計なことを言わないから、こんな風に欲しい言葉を言われると ホントにコイツもそう思ってるんだと感じて嬉しくなる。




「・・・願うとしたら、自分の希望が他人のそれと重なるように・・・願うことは・・・俺にもある。」



そう言って、輝ニは遠くを見た。一瞬泣きそうな顔に見えたが、すぐにいつもの顔に戻る。
輝ニからこういう風に話をするのは、怪奇現象といっていいほど珍しい。



「ここに来る前はそんなに他人と一緒にいる必要なんか全然なかったから他人は避けさえすればそれでよかったんだ・・・ なのにココに来てからというもの、お前らと一緒に戦わないと流石の俺でも切り抜けられないような局面がゴロゴロしてるし お前らホントに危なっかしいし、否応なくお前らと一緒にいないといけないから・・・」



そう言ってふう、と溜息をつきやがった! 流石にこれにはムカつくぞ!期待してただけに!


「ちょっと待て!じゃ何か?必要さえなかったら、お前は俺たちとは一緒にいないっていうのかよ!?」
「必要がなければ、いない方がいい」
「必要ってなんだよ!役に立つとか立たないとか、そんなことだって言うなら殴るぞ!」


半ば以上喧嘩腰で言葉を返したつもりだったが、輝ニは極めてそっけなく反応した。


「そうだ。お前たちに俺の戦力が必要なように、俺にはお前たちの戦力と・・・それだけでない力が必要だ。 だから俺はお前たちと一緒にいるんだ。」


・・・必要なのか?俺たちが?輝ニにとって本当に?
そう思いたいと思ってたけど、本人から聞かなきゃ半分くらい「でも輝ニは違うかも」を思ってた、まさにその事実だ。



「・・・だからそんな『必要』がなくなった・・・元の世界に帰ったときに・・・」


言葉を切って、俺を見る。俺しかいないんだから当たり前だが。輝ニらしからぬ不安に満ちた瞳で、少しばかりドキンとする。

「こんな風に一緒にまたいられたらいいな・・・とは願っては・・・いる・・・。」







「ば・・・」

実のところかなーり俺は長いこと何も言えなかったので、輝ニも動くに動けなかったらしい。
俺も俺で、あんまり吃驚したのとあんまり感動したのとで、とにかく言葉を続けるのに苦労したが、とりあえず深呼吸して がしっと輝ニの肩を鷲掴んだ。輝ニはその際かなりビクついたが、んなこたあどうでもいい!

『馬鹿野郎〜!それこそ「願いごと」じゃねえだろう〜!そういうのは『約束』って言うんだあああ〜!』

あんまり興奮してたんで、ガクガクとそのまま輝ニを揺さぶってしまった。輝ニ、ちょっとビビってる。

「や、約束?」
「そうだよ!ようーし!お前家と学校どこだよ?元の世界に帰ったら、必要なくても押しかけてやらあ! んでもってゲーセンとか買い食いとか行ってもいいしな!あ、何だったら俺のサッカーの練習に付き合ってくんないか? お前サッカーはやってないかもしんないけど運動神経異様にいいからきっと俺助かると思うんだ!ああ俺にばっかり あわせるのも何だからお前の要望もきちんと聞くぞ!お前どこ行きたい?」
「た・・・拓也」
「ああああ希望くらい言えよなああああ!あんまり小遣い使うところは却下だぞ?あーでも毎日ってワケでもないから 映画とかそのくらいなら何とか・・・」
「拓也、いい加減に止まれ!」



しまった。暴走した。 ちょっと頬が赤くなったのは自覚したが、目の前がもっと真っ赤なのでとりあえず・・・ちょっと気まずい(笑)。
「とにかく、『約束』だからな!俺とお前の!
やぶれかぶれにビシっと指を突きつけて宣言!よし!
「お前だけ・・・ではないつもりだったんだがなあ・・・」とこぼしていること自体は気に入らないんだけど その表情がすごく柔らかい笑顔だったので、とりあえず不問だ。思いがけない収穫に俺のテンションは最高潮!


・・・のハズだったんだが。




「当然それって私たちも対象よねv輝ニv」
「拓也お兄ちゃん、僕を置いてくってのはヒドイよ」
「てかお前、一人で突っ走りすぎなんだよ・・・」


茂みからずぼっと出てきた三人に俺は気圧される。いや、別に皆を阻害して輝ニと二人きりでどうこうというつもりでは なかったんだが・・・この三人をド忘れしてたのは・・・事実だ。実際、あんまり皆目が笑ってない・・・。


「まったくだ。輝ニは俺と一緒に暮らすんだから、そう好き勝手にされても困るよ」


っていつの間に輝ニの後ろに回りこんでるんだ兄!あまつさえ後ろから羽交い絞めるな!輝ニも輝ニでなすがままになってる んじゃない! 茂みの少々気分を害した険悪オーラと、輝ニを挟んだ格好の険悪オーラ。なかなかすごい状況になってしまったが、 こうなると後には引けない。


「一緒に暮らすゥ?どーしてそんなことになったんだ?」
「あ、それ俺の希望。だって家族はやっぱり一緒に暮らしたいからね。俺たちの場合難しいとは思うけど、夢は捨てたくないしね」
「・・・お前がいうと額面通りに受け取れないのは何故だ?」
「拓也が乱された邪悪な魂を持ってるからじゃないか?デジコードスキャンしようか?」
「誰がしてもらうかッ!大体昼間願い事を聞いたときにはえーとかうーとか言うだけで応えなかったくせに!」
「だってまだ輝ニに話してなかったもん。今も話してなかったけど一人暴走した人がいたから仕方ない。というわけで輝ニ、 そういう希望持ってていいかな?」
「応えるな輝ニ!どう応えても危ない展開になるに決まっている!」
「こらあ!私たちを無視しない!」





収拾のつかない子供たちの騒動を、三つの月だけが見守っていた・・・。
ちなみに輝ニは「どーにでもなれ・・・」と思ってた(笑)





ところで俺の願いごと。

『輝ニと、他とは違った友達になりたい』って言ったらアイツはどう返すんだろう。

許してくれるのか拒絶されるのか、怖いのと恥ずかしいのでちょっと言えない。
まさか『もうそのつもり』っていうことはないだろうけど、少しは期待していいんだろうか?


ネタはクリスマスCD。輝一加入前の話にするつもりだったのに、やっぱりちょっと出しちゃった。
でもあの輝一の「えーっと・・・その・・・」は輝ニを嫁にしたいと言いかねない自分を誤魔化していたんだと思うんだけど(笑)

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