にょた化注意!!←ここ重要
注:ガルデン一族の捏造設定入ります。
   ガルデン一族→もともと精霊族だった為、基本的に無性で自分の意思でどちらにもなれる。
   ガルデンはハーフなので、自分が望む姿になるのに魔力(魔法)が必要。
   ガルデンは姿を変える魔法だと思っているが、実は魔力のオンオフによって姿が変わっているだけ。
   ガルデンは調節が下手で結構大きくなるまでころころ姿が変わっていたので、自分がどっちかはっきり知らない。
   以上踏まえてお読みください。

二十年目の温泉


「あーー。やっぱり温泉は最高だよなぁ〜」
アデューがパッフィーと婚姻し、パフリシアの国王となって10年。
アデューはガルデンと二人、城を抜けだし、ヒノデ国の温泉地で羽を伸ばしていた。
パフリシアから遠くはなれたヒノデ国に足を伸ばした理由は一つ。
慶事が続いたヒノデ国出身の仲間二人に祝辞を述べる為だ。
この温泉宿はその会合場所だ。
久しぶりの再会に、皆、酒が進んだ。
あまりアルコールが得意ではないガルデンも、喜ぶアデューの勢いに押され、いくつか杯を重ねていた。
そして、既に出来上がったサルトビと月心を部屋に残し、酔醒ましも兼ねて、渋るガルデンを連れてアデューは温泉に入りにきたのだ。



月心は嫁を貰い、跡取り息子が誕生した。
その話を久しぶりにやって来たガルデンから聞いたとき、初めはアデューも自重していた。
自分が昔とは違う立場に居る事を理解して。
だが、サルトビはモモチの里のイオリの入り婿となり、とうとう頭領を継いだらしいと聞き。
そして、随分前に夫婦となったイオリとの間に、どうやら三人目の子供ができたようだとガルデンに知らされて。
間をおかずに齎されたヒノデ国での祝い事の数々に、アデューの我慢がとうとう切れた。
妻であり、政務のほとんどを取り仕切る女王のパッフィーに懇願し、許しをもらって会いにきたのだ。
しかし、公式に尋ねて祝いを述べるには、アデューのパフリシア王の肩書きが邪魔になる。
束縛されることのない自由な旅を望むアデューに、護衛兼手綱役として、かつて敵であり、現在は国王夫妻の友人兼国王の親友となっているガルデンに白羽の矢が立ったのだ。
傍若無人な過去の振る舞いとは裏腹に、腕が立ち、冷静かつ的確に、なおかつ堅実な手を好む常識的なガルデンは、確かに一見、お忍びの一国の王の護衛としては相応しい。
だがしかし、こと、アデューの手綱役としてはあまり役に立たないのは、今のところ気付いているのは誰もいない。
仲間たちはうすうす察し始めてはいるものの、誰も面と向かってそんなことを指摘できる者は存在していなかった。
ガルデンは我が強く、高慢で酷く侮辱を嫌い、その上まったく素直ではない。
下手に何かを口にして逆鱗に触れれば、何をどうするのか分からないところがある。
今のところ、その逆鱗に触れて無事でいられるのは、アデューとその妻のパッフィーだけだ。
とはいえ、アデューはそもそも当事者なので、そんな事には気付きもしていない。
パッフィーは気付いているそぶりはあるものの、穏やかに口を噤んだままだ。
故に、その見解は今のところ仲間達の胸だけに収められていた。
だがそれ以外のガルデンの逆鱗に触れた者の末路は悲惨なものだ。
ふと気付けばいつの間にかその者は何処かへ消えている。
廷臣であれば、いつの間にか政治の中心から遠く外れたところにいる。
なぜそうなっているのかは誰も知らない。
皆が知るのは、ガルデンを怒らせた者はいつの間にかいなくなるということだけだ。
それでいて、ガルデンが糸を引いたという証拠など、いくら洗っても何も出ては来ない。
ガルデンが何かをしたのではとの疑いは掛けれても、何をどうすることも出来ないのだ。
確かめるために問いかけても、意味ありげな微笑みとともに否定されて終わりなのだから。
そんなことを繰り返しながら、早10年。
アデューとガルデンは、着実に随分と親密な関係を築き上げていた。
男同士であるとは言え、時に、妻であるパッフィーですら入り込めぬ空気を醸し出す二人に、危ぶむ臣下もいるにはいた。
しかし、当の妻であり女王であるパッフィーの、『万が一の事があっても庶子の心配をしなくて済むだけ良いのではありませんか?そもそもあの二人はそんな仲ではありませんし』の一言で、誰も口出ししなくなったのだ。
その発言を知らぬのは、夫であるパフリシア王ではなく、王の護り刀と言われ始めている件の人物だけだということは、パフリシア宮廷での公然の秘密だ。
そして、一歩引いた立場から、王とガルデンの仲を目撃した物たちは、女王の言の正しさを実感して口を噤む。
確かに、酷く仲がいい。
だがそれはどこか幼い物を感じさせる仲の良さだ。
長寿の種族の血を引き、200を越えるが未だに20半ばに見えるガルデンと、30半ばに差し掛かろうという国王の見た目の年を、20〜30才程差し引いた姿に変換して、王とガルデンの戯れを再現してやれば、誰もが簡単に二人の仲を納得するだろう。
二人の間に艶めいた物など欠片も存在し得ない。
そもそも、ガルデンの容姿が酷く妖艶に整っており、女であれば傾国もかくやといわんばかりの美貌である事と、パフリシアを蹂躙し、悪行を繰り返してきた過去の所業のため疑われてきていたのだ。
だがしかし。
遠目に見れば王が口説き、迫っているようにしか見えない修羅場が、実は、巨大な闇の力と妖艶な美貌を持つ麗人と、邪竜族を打ち倒した光速の聖騎士と謳われる国王の、些か程度が低すぎる子供の喧嘩並みの下らない意地の張り合いだなどと、一体誰が思うものか。
とはいえ、その実状はこの10年の間に徐々に周りに知られていっていた。
知った誰もがその他愛のなさ呆れ、事によっては一国の王が、と頭を抱える者もいた。
それでいながら、誰も何も言わなくなっていったのは、遅々として進まなかったアデューの王としての教育を、ガルデンは王の教育係としては、他の誰の追随も許さぬほどの成果を見せていたからだった。
傍目にはただ、公衆の面前で下らない意地の張り合いの子供の喧嘩をしているだけなのに、なぜかその度にアデューには高度な政治の知識や宮廷の約束事がぐんぐんとものすごいスピードで身について行くのだ。
しかし、だからといってガルデンを普通に教育係としてアデューの教師役にしても、碌にアデューには知識がつかず、あまり意味はない。
ガルデンのスパルタ方式が効かない事も無いのだが、あくまで自然体の二人でなければダメだったのだ。
事情を知る皆が皆、首を捻る。
今ではパフリシア新七不思議の一つに数えられている。
だがある時、僧侶のイズミがポツリと言った。
思えば、ガルデンは敵であった頃から、無意識にアデューを育てるのが上手かった、と。
アデューとガルデンの出会いから今までを知る仲間たちは皆、その一言に深く納得をした。
確かに、ガルデンという敵が居たからこそ、アデューは騎士として目覚しい成長を遂げ、仲間たちの中でいち早く精霊石を使いこなす事が出来たのだから。
更に、ガルデンは普段、旅の空の下にあるのだが、ふらりとパフリシアに立ち寄る時は、常に何らかの情報を携えて来る。
そしてふと気がつけば、ガルデンはいつの間にかパフリシアの密偵といってもおかしくない働きをこなしており、ガルデンが齎した情報がパフリシアに益をもたらした事は幾度もあった。
そのくせ、一国に仕える気などないと公言して憚らないのだから、それらの行動は、本当にアデューに対する無自覚な親愛の気持ち故の物なのだろう。
事実、ガルデンはパッフィーが正式な密偵にならないかとの誘いを掛けた時、自分の気が向いただけのことで、正式に仕えて国からの命令をこなす気はないときっぱりと切り捨てていた。
アデューからの同じ提案も同様だった。
重臣達はそれを納得できず、パフリシアにもたらした災いよりも大きな益をもたらすガルデンを国に取り込もうと、あの手この手で国王夫妻をせっついていた。
そんな事情もあいまって、パフリシアでのガルデンの立場は、実はガルデンが思うほどそう悪い物ではない。
物の分かった重臣たちと、宮中の侍女と若い騎士たちを中心に、アデューとガルデンの織りなす珍妙な友情を生温かく見守る気風が生まれつつあったのだ。
そんな折のヒノデ国への旅だった。
「なあ、ガルデン。温泉って気持ちいいだろう?」
温かい湯に浸かりながら伸びをしたアデューが問いかけ、視線を向けた先には、薄い浴衣を一枚羽織ったまま湯船に浸かり、既にのぼせたようなぼんやりとした視線で湯を見つめ、全身を火照らせているガルデンがいた。
ガルデンが身に着けている浴衣は、裸の付き合いだ!とゴリ押しするアデューに、人前で肌を晒せるか!というアデューにとっては訳の分からないガルデンの主張により、温泉宿の従業員から進呈された浴衣だ。
ガルデンが手配したこの温泉宿は、ヒノデ国のお忍びのメッカであるらしく、渡された浴衣は、そういった人用の物だったらしい。
それはとにかく。
「あぁ、温泉とは思ったより心地良い物だな」
肌を淡く色づかせて、湯を含んだ浴衣を身体に張り付かせたガルデンが、声をかけられてアデューに気付き、酔いを感じさせる瞳のままはんなりと笑った。
その様が酷く艶めかしい。
ガルデンの妖艶な美貌に耐性のあるアデューですら、一瞬どきり、と心臓が波打った。
一枚だけ羽織った薄い浴衣が濡れて肌に張り付き、身体の線と肌の色を見え隠れさせる様が、背徳感を感じさせていやらしい。
何故か、肌を全て露にしているよりも、酷く淫らで色っぽく見える。
男色の気はないはずのアデューですら、変な気をおこしてしまいそうになる。
素面であっても、アデューは時折ガルデンに劣情を感じる時があるのに。
アデューは赤くなりながらガルデンから視線を逸らした。
この男は、反応がいちいち可愛らしいのだ。
常にクールな態度を崩さないガルデンがあたふたとする様がおもしろくて、ついついアデューは過剰気味にガルデンに構ってしまう。
特に、アデューからのスキンシップにガルデンは動揺する。
たとえば、再会の抱擁だとか、親愛を込めて肩を組んだりするともう大変だ。
顔を赤らめて暴れ、狼狽してむきになってアデューの接触を怒る。
それを指摘してやれば、更に顔を真っ赤にして怒りながら、こちらが非を認めて謝罪するまで延々と噛みついてくるのだ。
その子供っぽさも可愛らしいが、アデューが折れて謝罪をした後、頬を染めて視線を逸らしながら、小さい声でぽそぽそと自分の非も認める所も可愛らしい。
ガルデンはアデューよりもいくつも年上だというのに、年を経る毎にいつのまにかアデューの中では庇護すべき相手に変わってきていた。
きっと、その気持ちの萌芽はイドロに裏切られ、失意の中にいたガルデンと会話を交わした頃に蒔かれたのだろうと思う。
アデューのなかで、ガルデンに対する気持ちが悪い奴から放っておけない奴に変わったのは、確実にあの出来事からだ。
それから20年という長い年月が経ち、大人になった自分の中で様々な感情が芽を出そうとしているのだとアデューは感じていた。
とはいえ、自分たちは男同士だ。
自分にもガルデンにも男色の趣味はないはずだ。
だがアデューは自分がルデンに感じる親愛を否定する気はないし、その逆もありえないと確信している。
自分たちの間にどんなことがあろうと、ガルデンと自分の関係は変わることはないとも自負している。
ではあるものの、時折りガルデンから感じる色気は難物だった。
ふとした拍子に押し倒してみたくなる事が度々ある。
そんな事をすればどんな目にあわされるのか目に見えてるし、アデューの男としての沽券に関わる。
騎士として男の色気に負ける訳にはいかない!とアデューは心の中で密かに固く誓いを立てていた。
失礼します、と露天の浴室に仲居の涼やかな声が響く。
待ち望んでいた物が届いた喜びと、場に漂う妙な雰囲気を一掃するきっかけとして、アデューは仲居の登場を喜んだ。
「おー!待ってました!!」
嬉々として声をあげるアデューに、ガルデンが不思議そうに声をあげる。
「なんだ、アデュー。何をしたんだ?」
「ま、ま、いいからいいから!ガルデンはそこで黙って待ってて!」
そういいながら湯から上がり、腰に手ぬぐいを巻きつけた姿で、アデューは備え付けられている小さな引き戸を開けた。
「こちら、ご注文のお品です」
「ありがとう」
ごゆっくり、の一言で締めくり、立ち去って行く仲居には最早目もくれず、アデューは受け取った桶を片手にいそいそと湯舟に戻ってきた。
手ぬぐいを外すのももどかしそうに、湯のなかへと身を沈める。
アデューの行動を見守り、湯の上に浮かべられた桶の中身に気付いたガルデンが嫌そうに眉を顰めた。
「アデュー。貴様、また飲むつもりか…」
「これがまたおつなもんなんだって!いいからお前も付き合えよ!」
「断る。ここで飲むと酒の巡りが早くなる。私はあまり酒が得意ではないのは知っているだろう」
「お前こそ、俺が酒に強いのは知っているだろう?潰れちまったら俺が責任持ってちゃんと介抱してやるから、いいから付き合えよ!俺が信用できないのか?」
「しかし…」
ぐずぐずと渋るガルデンに、アデューは徳利と呼ばれるヒノデ国特有の容器から、対になっている一口サイズの盃に酒を注いで押し付けた。
「いいからほら!この酒結構イケるんだ。きっとお前も気に入る味だぜ?」
「…お前が私に薦める酒は度数が強すぎる。味が良いものが多いのは否定はせんが」
しぶしぶと受け取り、不承不承不平を漏らしたガルデンの、最後に漏らされた本音の呟きにアデューは酷く嬉しくなる。
自分の味覚を認められた喜びが浮かぶ。
ガルデンは酒を苦手としてはいるが、味は分かる。
体質的な物があるので、自分から飲もうとしていないだけなのだ。
「だっろぉ〜!?いやー、さすがガルデン!お前なら分かってくれると思ってたんだ。ま、ぐいっといってくれ!くぅ〜、うめー!!」
ばんばんとガルデンの肩を叩きながらガルデンに杯を薦めたアデューは、手酌で自分の盃に酒を注いで言葉どおりぐいっと呷った。
そんなアデューを見て目許を和ませたガルデンが、優雅な仕草で盃に口を付けた。
「ほう。確かにお前が言うだけのことはある」
僅かに目を瞠り、嬉しそうな表情で、粋な仕草でガルデンは残りを呷った。
急に酔ってしまわぬよう、普段は酷くゆっくりと、味わうように酒を飲むガルデンらしくない思い切りのよい飲みっぷりに、アデューは瞠目した。
そして、すぐに笑顔になる。
「どうしたんだよガルデン。お前らしくない飲みっぷりじゃん!」
「ふん。私だとて、この酒の嗜み方ぐらい辨えているわ!だが、アデュー。宣言通り、お前の言葉を守ってもらうからな。覚悟しておけ!」
にやにやとからかうアデューに対して、既に酔いが見えるとろりとした視線で流し目をくれながら、拗ねたようにガルデンは口を尖らせ、盃を突き出してきた。
「分かってるって!」
いつも飲酒に消極的なガルデンの積極的な姿に、アデューの機嫌も良くなっていく。
ぐいぐいと盃が進み、あっという間に二人で一本目の徳利を開けてしまった。
飲んでいる酒が二本目の徳利に突入したとき、だいぶ酔いが回っているらしいガルデンが、普段より高い声で嬉しそうに提案してきた。
「アデュー。次は私が酌をしてやろう」
「おう!」
めったにない申し出に、嬉々としながら徳利を渡して盃を向けたアデューは、違和感に目を疑った。
「ガルデン?」
「ふふ。さあ、飲め」
艶然と微笑み、流し目を向けながらしなだれかかってくるガルデンの顔は随分真っ赤だ。
気のせいか、輪郭が柔らかいような気もしなくもない。
その顔で、にこにこと素面ではありえないような笑顔を振りまきながら、アデューに酒を注ぎ、薦めてくる。
「お、おう」
勘違いか?と啜るように盃に口を付けたアデューの腕に、ふにょり、という感触の、柔らかくて温かい何かが押し当てられた。
知らぬわけではないその感触に、アデューは思わず口に含んだ酒を吹き出した。
「ぶっ、げほ、ごほごほ。っ、ガルデン!?」
「なんだ?アデュー」
上気した頬のまま、潤んだ瞳でとろんとした眼差しを向けてガルデンがアデューの首に腕を回す。
「なっ!ちょっ!おま!?」
混乱でアデューの声は裏返り、舌はまわらない。
親密な接触をあまり好まないらしいガルデンが、自分からアデューに抱きついてきた事も驚きだ。
「うふふふふ。どうした?アデュー。お前はいつも楽しいな」
甘えるように抱きついてくるガルデンの胸には、どう見ても膨らみがある。
それがアデューの二の腕を包み込むようにやわやわと押し付けられている。
そしてやはり声がどこか高く澄んでいる。
「な、な、な、な」
言葉にならないアデューに酔った目のガルデンが切なそうな表情で語りかける。
「アデュー?飲まんのか?私の酌では不満か?」
どくん、というとある衝動を下半身に感じながら、アデューは目を白黒させる。
「い、いや、そうじゃなくって。何でお前女になってんだ!?」
ガルデンは何を言われたか分からないと言うように首を傾げる。
あどけなさの宿るその仕草に、アデューの男は刺激された。
「女?」
不思議そうな問いかけに、胸にガルデンの性別を思い浮かべながら必死にアデューは頷いた。
「ああ!」
驚きすぎて、せっかくの酔いが覚めてしまった。
不意にガルデンがアデューから身を離した。
ガルデンの身につけていた浴衣を介してと、むき出しになった部分から肌に直接押し付けられていた女体の柔らかさに、危ない物を感じていたアデューは、ほっとする。
そして、随分と深く酔いすぎているらしいガルデンの行動に目が点になった。
わし、と自らの膨らみを、ガルデンはアデューの目の前で鷲掴みにする。
自分の手に感じる感触に不思議そうに小首を傾げながら、形の良い胸を揉みしだく。
ガルデンの細い指の動きにあわせて、むにょむにょと形を変えるそれにアデューは瞠目し、目を奪われた。
やがてガルデンは、納得したように手を離し、しばし呆然と湯に視線を落として放心する。
そして、うつむいていた顔をアデューに向けて、困ったようにはにかみながら爆弾発言を落とした。
「魔法が解けてしまったようだ」
「は、はああああああああああああ!?」
寝耳に水どころではない情報に、アデューは素っ頓狂な声をあげてしまった。
「な、ま、魔法って、お前、男じゃないのかよ!?」
「さあ?」
「さあっ!?」
「アデュー」
うっとりとした視線で艶めかしい笑みを浮かべながら、ガルデンはアデューに詰め寄る。
「な、な、なんだよ!お前、ほんとは男なんだろ!?そうだって言ってくれよ!」
「知らんのだ」
「なんでだよ!お前、男だったじゃないか!」
先ほど、風呂に入る前と、浴衣の陰に隠された部分についていたものを、アデューはこっそり目にしていた。
その時のガルデンは確かに、しっかりと男だった。
でも、今は違う。
焦りを感じ、真っ赤な顔で後ずさるアデューを、ガルデンが緩慢な仕草で追いかけてくる。
その表情からは、切なさと、酔いが回っている事しか読み取れない。
「だって、男の方が都合が良い」
「な…」
「女の姿はな、腕力はないし、余計な輩は次から次と沸いて出てきて鬱陶しいし、押し倒されれば抵抗できないし、おまけに月に一度必ず動けなくなるのだ」
とろりとした表情のまま、ガルデンは女の身体の不便さを切々とアデューに訴えてくる。
「男であれば、それらの不都合はだいぶ減る。いつでも私の思う通りに戦う事ができる」
湯船の端に追い詰められたアデューは、ゆっくりと自分の頬に手を当てて顔を近づけてくるガルデンに喉を鳴らした。
「じゃ、じゃあ、お前、本当はオンナなのか?」
信じていた物が打ち砕かれた衝撃を感じながら、アデューは震える声で問いただした。
ずっとガルデンを男だと思い、男として扱ってきた。
ガルデンに対する好意が変わる訳ではないが、本当はガルデンの性別が女だったのだとしたら、アデューはガルデンに対する態度を変えざるを得ない。
感じる劣情を押し殺すことなくぶつけてしまうかもしれない。
アデューにはパッフィーがいるのに。
けれど、パッフィーはガルデンが相手なら認めるような発言を随分前にしてくれている。
ごくり、と咽喉を鳴らしたアデューの前で、どこか夢を見るような表情できょとんとしたガルデンが、アデューの質問に考え込むように動きを止めた。
赤らんだ顔で緩やかに艶然と微笑み沈黙するガルデンが恐ろしい。
息を呑むアデューの目の前で、血色良く色づいた艶やかな唇が動き出した。
「さあ?」
「……はあっ!?」
予想外のガルデンの一言に、アデューは再び素っ頓狂な声をあげた。
ガルデンの言葉の意味がアデューには分からない。
自分の性が分からないなど、有り得るだろうか。
絶句して固まるアデューに、ガルデンが拗ねたように口を尖らせる。
「だって私は、私以外のガルデン一族なんぞ知らん。私がどちらかなんて考えたこともない。私は、私だ」
「いや、え、えええ!?」
初めて知る事柄にアデューの驚愕は止まることを知らない。
「まて!だって、お前、男色じゃないって!」
「男同士で肌を合わせる趣味は私にはないぞ。あれは嫌だ。私は女にもなれるしな。お前は女になれても、それでも敢えて男同士で肌を合わせたいとそう思うのか?」
目の縁を赤く染め、呼気から酒気を漂わせながら、ガルデンが不思議そうに聞いてくる。
「いやっ、だって、俺、男だし!女になんて普通はなれないし!!」
焦りまくったアデューの言葉にふふふふ、と可愛らしく笑いながら、ガルデンは嬉しそうに笑ってアデューの胸にしなだれかかった。
「私はどちらにもなれるぞ?いいだろう!」
「いや、いいとか悪いとかの問題じゃないだろう…!?」
力の抜けた身体をアデューに凭れ掛けさせ、赤い顔で誇らしげに笑うガルデンにアデューは頭を抱えた。
初めて見る全開の笑顔のガルデンは、女になっている事もあって、酷く幼さを感じさせて可愛らしい。
しかし、その言動は、どう考えても普段のガルデンのものではない。
ガルデンは確実に酔っている。
頭痛を堪えながら、自分の肩に顎をのせ、胸に体重を預けて、ご機嫌の態でくすくすと笑うガルデンをどうしたものかとアデューは悩み始めた。
女性としての柔らかい曲線を描くようになった肌も露なガルデンを、こうして裸の自分の胸に抱いたまま、何もしないでいる自信は全くない。
アデューとて、酒が入っている事を自覚している。
こうしている間にも、目の前の女体を抱きたくて仕方がなくなってきていた。
ぴったりとアデューの胸に押し付けられている、ガルデンの胸の感触が気持ち良い。
しかし、騎士として、前後不覚に近い状態の相手に手を出すわけにはいかない。
しかも相手はガルデンだ。
その気持ちがアデューの劣情を必死に押しとどめる。
「…で、結局、おまえはどっちなんだ?」
痛む頭をもみ込み、気を逸らそうと問いけたアデューに、ガルデンはアデューの胸から身を起こした。
アデューの目の前に、濡れて肌の色を透かしながら、身体の線に沿って張り付く浴衣で際どい所を隠されたガルデンの胸の膨らみが、アデューの目の前に曝け出される。
思わずそれに目を奪われたアデューは、湯船の中に佇むガルデンの姿に言葉を失った。
少し離れたせいで、アデューからは、ガルデンの身体の線が余すところ無く見渡せるようになっていた。
全体的に華奢で細く、それでいてしっかりとメリハリのついた、男ならば一度はこの手に抱いてみたいと思わせる艶美な肢体だった。
生憎、湯に浸かったところからは、水中に浴衣がたゆたい、ガルデンの身体を見えそうで見えないように隠している。
思わずそこに視線が吸い寄せられたアデューに、酔いを感じさせはするものの、真剣で、悲しげな響きのガルデンの声が届いた。
「お前はどちらの私がいい?」
視線をあげたアデューの前には、物憂げで切なげな表情の、儚い雰囲気を纏ったガルデンがいた。
「ガルデン…」
「お前も、私を気持ち悪いと思うのか?どちらでもなく、どちらでもある私は嫌いか?」
バイフロストに現れる流氷のような薄い色の瞳を、酔いだけではなく涙で潤ませて、声を震わせてガルデンはアデューに問いかけてくる。
たっぷりと涙を湛え、泣き出しそうな表情で自分を見つめるガルデンに堪らなくなったアデューは、堪えきれずにガルデンを引き寄せてガルデンの唇を奪った。
息すらも奪い取るように激しく口付ける。
アデューの唇が離れると、うっとりした表情でガルデンは息を吐く。
ガルデンは碌な抵抗もせずにすんなりとアデューの腕の中に納まり、大人しく身体を預けてくる。
そんなガルデンに愛しさがこみ上げたアデューは、元から細くはあったが、女になって一段と細くなったガルデンの身体を抱き潰さんばかりに抱きしめた。
「ガルデンはガルデンだ。それでいいよ。お前がどっちだろうと、俺はお前の事が好きだ」
アデューにしがみついていたガルデンの細い腕がアデューの背中におずおずと回される。
儚いくらい控えめに抱きしめてくるガルデンの、泣きそうな声がアデューに届いた。
「私もお前が好きだ。お前が望むなら女のままでもいいと思うくらい。女の私は男の私より弱くて嫌いだ。弱点が増える。でも、お前が望むなら女でもいい。お前はどちらの私が良い?私はお前の望む私でいてやる」
小さな声でもたらされたガルデンの囁きに、胸を突かれたアデューは慈しみを込めて囁いた。
「どっちでも。お前の好きな方でいればいいさ。でも、今は、女でいてくれたほうが嬉しいかな」
それはアデューの正直な気持ちだったが、男としての下心が最後にぽろりとこぼれ落ちた。
「今は?」
育ちきったアデューの分身が、ガルデンに対するはちきれそうな欲望を伝えてくる。
ぽやんとした表情で、不思議そうにするガルデンのこめかみに口付けながら、アデューは囁いた。
「うん。今は」
「ふふふふ。アデュー、お前、私が欲しいのか?」
密着した体からアデューの気持ちを察したらしいガルデンが、くすくすと笑いながら意地悪く問いかけてくる。
「欲しい」
男としての熱を感じさせる声で、アデューはガルデンに頷いた。
とろりとした酔いを感じる仕草でガルデンは笑う。
「ふふ。男に抱かれるのは好きではないが、相手がお前ならば別にいいぞ?好きにしろ」
ガルデンは甘ったるく蕩けた声でそう言って、うっとりと瞳を閉じ、アデューに唇を寄せてくる。
アデューは逆らうことなく差し出されたガルデンの唇を貪った。
→次


ちなみに契機となった拙絵。裏から浮上。

これが


こうなると(笑)

リュートップ
TOP